Nigorobuna’s blog

普段の講義や本を読んだり人と話したりしたことについて

『人はみな妄想する』著:松本卓也 読了

 精神病と神経症の鑑別診断が実に様々な観点からアプローチされてきたのだということ。そしてそれは現代の精神医学の診断方法とは全く異なっている。ラカンの思想がエディプスコンプレックスから段々と離れていくことは聞いていたがその過程が読み直すことで理解が深まった。

 ラカンとアンチオイディプスがどのような関係にあるのかについても、先の指摘を踏まえるとこの二つは完全に相反するものではないということが語られる。そしてデリダラカンの論点その差異、特異性を重視する精神分析のこれからについてが語られてこの本は終わる。また一貫して解説はとても詳しく丁寧な印象を受けた。人はみな妄想するというタイトルにもなっているラカンの言葉は鑑別診断が相対化されていくことを象徴していてかつキャッチーである。

 やはり60年代、70年代と難しくなっていった。用語がどんどん出て来てそれがフロイトでいうところのアレに似ていてラカンのアレに対応して…みたいなことが多くて大変。数日で読もうとして実際そうしたが少し無茶をしたという印象。ただ読んでいて楽しかったので後悔まではしていない。そう楽しいのだがやはりこういった本を読んだ後は小説がいいです。